身体醜形症(BDD)について

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身体醜形症とは

身体醜形症とは

 実際には他人から見て気にならない、あるいは存在しない身体の欠点に対してとらわれてしまい、本人が強い不安や嫌悪感を抱き続ける精神疾患です。

有病率

 米国成人を対象とした全国疫学調査における時点有病率は、2.4%(女性2.5%、男性2.2%)でした。世界的には皮膚科患者で11~13%、一般美容外科患者で13〜15%、鼻形成術患者で約20%、成人の顎矯正術患者で約11%、成人の矯正歯科・審美歯科患者で5~10%が身体醜形症の診断基準に当てはまりました。

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身体醜形症の症状と特徴

 身体醜形症では、自分の外見に対する強い不安や否定的な思い込み・とらわれが、日常生活にさまざまな影響を及ぼします。

 主に以下のような症状が表れます。

  • 鏡を何度も確認する(対鏡症状)、又は、極端に避ける行動をする。
  • 特定の部位を髪型やメイク、服装で隠そうとする等の過剰な身繕いをする。
  • 他人と自分の外見を常に比較する。
  • 美容整形や皮膚科治療を繰り返し求める。
  • 外出や人との関わりを避けるようになる。
  • 家族に対して「自分は醜くないか」を繰り返し確認する。

 これらの症状は一時的な悩みではなく、長期にわたり繰り返される傾向があり、本人の意思だけで抑えることが難しい場合があります。

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身体醜形症の原因

 身体醜形症の発症には、さまざまな要因が関係しています。
 まずは、幼児期に出来上がる発症への土台を作り出す要因を整理していきましょう。

3-1.遺伝的要因

 身体醜形症の有病率は強迫症をもつ人の第一度親族において高くなっているというデータがあります。又、身体醜形症の遺伝率は、思春期および若年成人の双生児の研究において37〜49%と推定されています。強迫症と共通の遺伝的脆弱性に加えて、身体醜形症に特異的な遺伝的影響が存在することが示唆されています。

3-2.病前性格

 身体醜形症になりやすい性格の形成には、素質と幼児期の生育環境が複雑に関与しています。身体醜形症の患者様には完璧主義者が多く、細かいことに注意が向かう強迫傾向があります。

3-3.特徴のある母子関係

 不安や抑うつ傾向の強い母親に「かわいい子」として育てられる、母親からの様々なメッセージや関係性そのものが、容姿の美意識に影響すると考えられています。

3-4.幼児期からの同胞関係や友人関係での体験

 姉や妹の容姿が優れており、容姿で負けていると思い込む、又、同級生から容姿を褒められた・揶揄された等との関連が示唆されます。

3-5.文化的影響

 アニメなどを中心としたメディアによって、容姿の優れたイケメンや美人のイメージを刷り込まれていることも、本人が気付かないうちに影響を受けていると推察されます。

 そして、その「土台」に、児童期の育児放棄や虐待、いじめ、心的な外傷体験、さらなる文化的な刷り込み、思春期における自己意識の高まり等の要因が加わって、身体醜形症の発症が認められると言われています。

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身体醜形症の診断

『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版のDSM-5-TRでは強迫症及び関連症群(スペクトラム) に含まれ、下記の診断基準を満たせば身体醜形症の診断となります。

身体醜形症 Body Dysmorphic Disorder F45.22

診断基準

  • 1つまたはそれ以上の知覚された身体上の外見の欠陥または欠点にとらわれているが、それは他人には認識できないかできても些細なものに見える。
  • その障害の経過中のある時点で、その人は、外見上の心配に反応して、繰り返し行動 (例:鏡による確認、過剰な身繕い、皮膚むしり、安心希求行動など)、または精神的行為(例:他人の外見と自分の外見を比較する)を行う。
  • その外見へのとらわれは、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
  • その外見へのとらわれは、摂食症の診断基準を満たしている人の、肥満や体重に関する心配ではうまく説明されない。
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身体醜形症の鑑別

5-1.摂食症

 摂食症をもつ人が太ることや体重増加について心配するのは、身体醜形症ではなく摂食症の症状の1つとみなされます。
 しかし、体重に関する心配は身体醜形症においても生じることがあります。
 その為、併存しうるものであり、その場合は両者ともに診断されるべきです。

5-2.他の強迫症及び関連症群

 身体醜形症のとらわれと繰り返し行動は、外見にのみ集中している点で、強迫症の強迫観念および強迫行為とは異なっています。
 この両者は他の点でも異なっており、例えば身体酸形症では病識がより乏しく、うつ症状の頻度が多く、自殺念慮の確率が高いことが挙げられます。
 皮膚むしりが皮膚の欠陥と認めた部位の外見を改善しようと意図されたものの場合は、皮膚むしり症ではなく身体醜形症と診断されます。体毛をとる、体の毛の外見における欠陥を改善させようと意図されたものの場合は、抜毛症ではなく身体醜形症と診断されます。

5-3.不安症群

 社交不安や回避は、身体醜形症に一般的に認められます。
 しかし、身体醜形症の特徴である社交不安と回避は、知覚された外見の欠陥への懸念、およびその身体的な特徴のために自分が醜いと思われ、笑いものにされ、または拒絶されるという信念または恐怖に起因していると考えられます。
 全般不安症と違って、身体醜形症の不安と心配は知覚された外見の欠陥に集中している点が鑑別点として挙げられます。

5-4.病気不安症

 身体醜形症をもつ人は、深刻な病気になっていることや病気にかかることに囚われているわけではなく、臨床例においても身体化の程度が特に高くなっているわけではありません。

5-5.発達障害

 こだわりとして身体的な部分が気になり、又、そのこだわりに加えて、社会的・感情的な交流や非言語コミュニケーションに欠陥があり、幼少期からそれらが一貫して持続しているようであれば、発達障害が鑑別疾患として考慮されます。

5-6.うつ病

 うつ病や抑うつ症状は、身体醜形症の人に広く認められ、しばしば身体醜形症が引き起こす苦痛や障害に伴って二次的に現れます。身体醜形症の診断基準を満たす場合には、たとえ抑うつ状態であっても身体醜形症の診断がつけられます。

5-7.統合失調症

 身体醜形症をもつ多くの人が、外見に関する妄想的な信念を有しており、これは妄想症としてではなく、「身体醜形症、病識が欠如した・妄想的な信念を伴う」と診断されます。
 外見に関連した思考または関係妄想は身体醜形症についても一般的に認められます。
 しかし、統合失調症や統合失調感情症と違って、外見について際立ったとらわれ、およびそれに関連した反復行動があり、行動の統合不全および他の精神症症状は認められません。

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身体醜形症の検査

心理検査・評価尺度

6-1.J-BICI(日本語版Body Image Concern Inventory)

 J-BICI(日本語版Body Image Concern Inventory)は、身体醜形懸念を評価するための自己記入式質問紙として開発されました。このツールは、容姿に対する安全確保行動(容姿の欠点を隠したり、確認したりする行動に関する項目)、回避行動(容姿の問題のために社会的な状況を避けたり、安全を求めたりする行動に関する項目)、否定的評価(自分の容姿に対して否定的な感情や評価を抱くことに関する項目)の3つの因子から構成されています。

 J-BICIは、信頼性と妥当性が確認されており、身体醜形懸念を測定する尺度との正相関が認められています。また、因子構造は男女間で共通しており、内的整合性が高いことが示されています。全19項目で構成され、1「まったくない」から、5「いつもそうだ」の5件法での回答であり、得点が高いほど、身体醜形懸念が強いことが示唆されます。

6-2.BDD-Y BOCS(Body Dysmorphic Disorder Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale)

 身体醜形症のために改編されたBDD-Y BOCSは、身体醜形症の重症度を評価するために極めて有効な道具であるといえます。BDD-Y BOCSは強迫症の重症度を調べるために開発された、Y-BOCSが基礎になっています。

 最初の5項目は身体醜形症に関連した考え、次の5項目は身体醜形症と関連した行動について調べる項目です。11番目は洞察に関する項目で、12番目は回避に関する項目です。

 BDD-Y BOCSは再現性があり、一貫性と妥当性を持ち合わせた精神科的評価尺度としての特性を持っていることがわかっています。又、治療による症状の改善度についても敏感さを備えている検査です。

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身体醜形症の治療

 身体醜形症の治療は特定の抗うつ薬、具体的には選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはクロミプラミン(三環系抗うつ薬)による治療が効果的です。多くの場合、高用量の投与が必要になります。
 SSRIとクロミプラミンが無効であることが判明した場合は、抗精神病薬での増強療法を行います。また、身体醜形症の症状に焦点を合わせた認知行動療法が有効になる場合もあります。

 多くの専門家は、重症例では薬物療法と認知行動療法を併用することが最善と考えています。この治療法では、患者が自分の外見についてより正確で建設的な考え方ができるように医師がサポートします。
 また、鏡で自分の姿を確認する、皮膚をむしるなど、過剰な反復行動をやめることを話し合い、社会とかかわり合いを持つ事で多様な価値観を感じられるように支援をしていきます。